古い擁壁のある土地は要注意
私が不動産取引にかかわるようになって今年で32年目になります。
その間、数千の物件を見てきたのですが、こういう土地は怖い、取引したくない、そう思うのは擁壁のある土地建物、又は擁壁の下にある土地建物です。
大体の物件において、肝心の擁壁が築造された時期が不明であり、あとどのくらいの年月、安全なのかさっぱりわからないからです。
目視で確認し、現在のところは問題ない、そう判断することしかできません。
古い擁壁は不適格擁壁であることが多い
擁壁は建築基準法では工作物となり、高さが2mを超えていたら建築確認が必要です。また、宅地の造成工事の規模、内容によっては、都市計画法の開発許可や旧宅造法の宅造許可など法的な許可を得るのが原則です。
ところが、古い擁壁のほとんどがこれらの手続き、許可を得ていません。
その多くが法的には不適格な状態です。『不適格擁壁』
土地の所有者にヒアリングしても、現在の家を建てる前からあったはず、などと不明確な回答しか得られないことが多いです。
当然、擁壁の図面などは無いので、明確な擁壁の築造時期だけでなく、構造もわかりません。
実際に私が目にした危険な擁壁
私は、以前からこのような擁壁の上や下にある土地建物がどうしても気になってしかたがないのです。
それは、実際に危険な擁壁を何度も見たことがあり、そんな擁壁のある土地建物にはかなり悩まされた経験があるからです。
明らかに危険な状態の擁壁のなかでも一番だった物件が、神戸市の放置空き家の擁壁です。
主な症状は以下のとおりです。

その空き家は完全に傾いていました。
部屋の中でまっすぐ立っていられません。
そのような室内では、人間は気持ちが悪くなります。
長時間はその空き家の中に居ることができませんでした。
そのような状態では人に貸すこともできず、かなり長期間、空き家状態です。
いつから空き家なのかは所有者が何回か変動したこともあり不明でした。
室内にカレンダーが残っており、日付は10年以上前のものでした。
10年以上誰も住まず、放置され続けていたわけです。
この空き家が傾いた原因は擁壁が原因でした。
空き家のある土地には高さが3mから5m位の高い擁壁がありました。
擁壁には目視ですぐにわかる大きな亀裂が何本も入っており、擁壁が膨らんでいることもわかりました。
(擁壁が膨らんでいる状態をはらみ(孕み)、と言います。)
擁壁がずれ、土地が沈んだことが原因で空き家が傾いた、沈んだわけです。
危険な擁壁の対処は困難
擁壁を直すのも、空き家を改修するのも多額の費用を要します。
この空き家の今までの所有者は処分に困り、そのまま放置し続けていました。
そんなとき、私の知り合いの不動産業者が1万円で買い取ったのです。
私は、この空き家の調査依頼を受け、法的な問題点、土地家屋の状態の問題点などを調査し、報告書を提出しました。
同時に建物の修理工事費用の見積もりも取って添付しておきました。
建物の改修工事費用は300万円程度でした。
しかし、擁壁がどうしようもない状態でした。
結局、そのまま放置が継続されることになってしまいました。
擁壁はかなり長く、その上の土地には対象の空き家以外にも3軒の家が建っていました。
擁壁を直すのであれば、他の所有者も一緒に直す必要がありました。
費用負担の問題もあり、他の3名の所有者の同意を得るのは困難と判断されました。
結局、擁壁の問題を解決することができませんでした。
私は調査報告書提出した時点で業務を終了したため、その後、空き家がどうなったかは知りません。
Googleマップの航空写真を見る限り、そのままの状態です。
擁壁は高さだけでなく、横の長さも注意が必要です。
擁壁の上に数軒の家があった場合、その境界線は擁壁上にもあると考えられます。
擁壁は一体であっても、所有権は分かれています。
損傷が明らかな擁壁だけを改修するということは難しく、一体となっている擁壁も改修する必要があります。
その場合、所有者の同意を得る必要があり、改修工事が困難となることが予想されます。
危険な擁壁は問題解決が困難です。
危険な擁壁がある土地、その下にある土地は買わないこと、所有しないことがトラブル防止のために最善です。







