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渡す世間は鬼ばかり ラーメン屋「幸楽」がお金を出さずに店舗を建替えることができたワケ

今回は、ドラマ『渡す世間は鬼ばかり』の中のお金と不動産の話です。
『渡す世間は鬼ばかり』の放送が始まった頃はまだバブル経済の余韻が残っていました。初期のストーリーには不動産に関する内容が含まれています。

岡倉家の次女、五月(演じているのは泉ピン子さん)の嫁ぎ先、ラーメン屋「幸楽」は、東京都内のどこかの商店街にあるラーメン屋です。
建物の1階が店舗、2階が住居、五月夫婦はこの建物の奥にある離れのような建物に住んでいます。建物は木造の古い建物で、はっきり言うとボロい建物でした。

第2シーズンが始まると、「幸楽」は綺麗な鉄筋コンクリート造マンションに建て替わっています。五月夫婦と姑は、このマンションの2階にある一室に住んでいます。
けっこうな大きさのマンションに、店舗と住居の2室を所有しています。

建替えには大金が必要になったはずなのですが、五月たちは、お金を出さずに建替えられたと言うのです。
どうしてお金も出さずに建替えることができたのか?

答えは、等価交換です。
「幸楽」の土地建物と、新たに建つマンションの区分所有権を交換したということです。
ちなみに、「幸楽」は、店舗と2階の住居以外に、もう1区画所有しているようです。(義妹たちの店舗として利用されていた区画)

等価交換は、マンション開発でよく使われる手法です。
地主は土地と、新築されたマンションの床を交換します。
不動産の形が変わるだけです。

等価交換は、「幸楽」のように、現金を持たない地主にとっては、現金を使うことなく建替えることができるメリットがあります。
現在の都市部では、空地は少なく、何らかの建物が建っています。

解体撤去、再開発にかかるコストはかなり大きくなります。
お金の面で、建て替えが難しく、悩んでいる土地所有者は多いと思います。

そのようなケースでは等価交換は有効な手法です。
ただし、開発するデベロッパーがいないとできません。
デベロッパーが検討できる条件がそろった土地でなければ検討してもらえません。
要はマンション適地であるかどうかです。

マンションの適地であるかどうかの条件は主に3つ。

第1にマンションの需要がある立地。
マンションを分譲して売れなければ意味がありません。

第2に土地の面積。
ある程度、土地がまとまっている必要があります。

第3に容積率。
上に伸ばせるだけの容積率がある土地であること。
できるだけ上に伸ばして販売できる戸数を増やすことができれば、マンション開発の収益性が上がります。

「幸楽」のある土地は商店街の中です。
用途地域は商業地域か近隣商業地域に指定されていると思われます。
指定容積率も大きくなるので、マンション開発に適した立地だったのでしょう。
土地面積については、「幸楽」とその周辺の土地をまとめ、マンションを開発したと思われます。

商業地など、容積率の高い地域にまとまった土地建物を所有している場合、等価交換を使って建替えることができるかもしれません。
ただし、等価交換は、土地所有者とデベロッパーの間でトラブルになることもあるので注意が必要です。
ご自分たちだけでなく、第三者の意見も聞きながら慎重に検討する必要があります。
(等価交換のトラブルについては、また別の機会に、訴訟にまで発展した事例をお話ししたいと思います)


※このブログ記事は、2024年9月18日に発信したニュースレターの記事を再編集したものです
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