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地震と耐震化

地震について

元日に発生した能登半島地震。
被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。
被災地の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます

今日1月17日は阪神・淡路大震災が発生した日。あの日から29年経ちました。
1995(平成7)年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。
発生から約1か月後、私は被災地に入りました。
当時、四国でハウスメーカーに勤務していたのですが、神戸市内の家屋倒壊状況を調査するチームに派遣されました。
毎日、担当地区を地図を片手に通りの隅々まで余すところなく歩き、全壊、半壊等の被害を受けた家屋をこの目で見ました。
木造家屋の倒壊は確かに多かったのですが、衝撃を受けたのは、構造では一番強固なものと思っていた鉄筋コンクリート造の建物がかなりの数、倒壊したことでした。

私が所属していた会社が建築した家屋は、全壊、半壊はありませんでした。また、木造、鉄骨造を問わずライバルのハウスメーカーが建築した家屋も、私が知る限り、全壊した建物はありませんでした。
隣り合わせに建っているのに、全壊する建物とほぼ無傷の建物がある。
倒壊した家屋では下敷きになり亡くなられた方がいます。
この差に愕然としました。
神戸であの光景を目にしてから、私は、耐震強度の高い建物の普及を後押ししたいと考えるようになりました。
地震は無くならない以上、私たちの暮らす町、建物すべてを地震に強いものへと変えていかなくてはなりません。

建物の耐震化

元日に発生した能登半島地震でも多くの家屋が倒壊し、大勢の方が建物の下敷きとなり命を落とされました。
建物の倒壊による被害が大きい点は、阪神・淡路大震災と同じです。
テレビでは、あの日の神戸と全く同じように、1階が潰れた家屋を映し出しています。
輪島では大規模火災が発生。
29年前の光景と全く同じでした。

国は、阪神・淡路大震災以後、建物の耐震化を促進してきました。
耐震化を促進するための方策としては主に2つ挙げられます。

建築基準法改正(2000年基準)

第一に、建築基準法を改正し、耐力壁のバランスや柱や梁の接合部の基準を定め、耐震性能の強化を図りました。昭和57年以降に建てられた新耐震基準の家屋であっても震度7の地震で一部が倒壊し、新耐震基準では震度7の地震で倒壊を防げないとわかったためです。
主な原因は、強い揺れによって柱、梁、土台の接合部分が抜けたこと、一部の壁に大きな開口部を設け、耐力壁の偏りがあったことでした。これに対してあらたな基準を設けました。
改正建築基準法は1998年に公布され、新耐震基準は2000年に施行され、2000年基準などと呼ばれています。

住宅品質確保促進法 住宅性能表示制度

第二に、住宅品質確保促進法(正式名称:住宅の品質確保の促進等に関する法律)を施行し、住宅性能表示制度の導入などにより住宅性能の引き上げを図りました。
住宅性能表示制度は、消費者が住宅の性能を理解しやすくし、比較検討する材料とできます。
性能表示事項には、「構造の安定に関すること」という項目があり、その中に耐震等級、耐風等級、耐積雪等級などがあります。
地震に対しては耐震等級が重要となります。
耐震等級を確認することで、その家屋がどれだけ地震に強い構造になっているわかります。

29年経っても耐震化が遅れている現状

国は、上記のような法改正、新法などを導入し、2020年までに住宅の耐震化率を95%以上とする目標(住生活基本計画)を立てていました。結果、大都市圏では耐震化率は高くなりました。
しかし、能登半島地震の被災地では、被災地の耐震化率は50%前後と低かったようです。

2024年1月16日 中日新聞の記事から抜粋 「能登地震2週間 今できる耐震化から
国基準に照らすと、石川県輪島市の住宅耐震化率は2019年末で約45%、珠洲市は18年度末で約51%と90%近い同時期の全国平均に比べ極端に低い。両市は融資制度を設けて耐震化を進めてきたが個人負担がネックとなってか実施は年平均で数戸程度にとどまる。

被災地では、2000年の改正建築基準法施行後に新しい基準で建替えられた家屋自体が少なかったようです。耐震工事も進んでいなかったようです。
能登半島の被災地に限らず、人口減少が著しい地域では、新しい家が建つことが珍しく、2000年施行の新しい基準どころか、昭和の古い木造住宅、昭和56年以前に建てられた旧耐震と言われる古い耐震基準の建物が多く残っています。
地方の一部の地域で極端に耐震化率が低い現状が浮き彫りになりました。
家屋の倒壊を防ぐには、耐震性能を上げていくしかありません。
今後、都市部だけでなく、人口の減少が著しい地方の地域であろうと、耐震化率を上げていくために建替え、耐震工事を推進していかなくてはなりません。
住宅の耐震化は最優先事項です。

地震に強いまちづくりのための施策

地震の被害を抑えるためには、建物単体の耐震化が最も重要な方法ではありますが、地震では町全体の地震対策も必要です。
特に地震で起こる大規模火災の対策は重要です。
大規模火災への対策としては、木造密集市街地を整備し延焼を抑えることができれば被害を最小限に抑えることができます。

密集市街地整備促進法 木造密集市街地

大規模火災への対策については、1997年に密集市街地整備促進法を施行し、木造密集市街地の木造住宅の建て替えを促進しています。

私が住む神戸市灘区でも、神戸市の密集市街地再生方針に基づき、水道筋商店街付近にある市場が次々と再開発され、小店舗の市場からマンションに建て替わっています。私が通っていたおいしい焼き鳥を売っていた店も惣菜店もきれいな大きいマンションに変わってしまい寂しい思いをしております。確かに古くからある市場は、木造の古い家屋が密集しており、路地に車輛は入れません。火災になったら延焼し大規模火災になるでしょう。
建替えられてマンションになる前、市場で火災があって、2、3軒延焼したことがありました。灘消防署が近いということもあったとは思いますが、よくその程度の火災で済んだと思います。
神戸市のお隣、明石市では2017年10月に「大蔵市場」で大規模火災があり、市場の約30店舗が全焼、周辺の民家約10棟も焼けた大規模火災があったことは記憶に新しいところです。大規模な地震が発生した際には、このような木造密集市街地で大規模火災が発生する可能性があります。能登半島地震では輪島市の朝市通り付近で焼失面積約5万800㎡にのぼる大規模火災がありました。
木造密集市街地の再開発、再生もまた重要な防災対策です。

しかし、木造密集市街地の再開発、再生もまたあまり結果が出てないと思います。
地権者が多くまとめるのが難しいうえに、地方公共団体や国主導で再開発するにも、財源や事業採算の問題があります。
大都市圏の好立地であれば民間の投資もあるので前向きに進むことがありますが、人口が減少している地方では、投資する人も買う人もいないため困難です。

空き家問題

地方での木造密集市街地の問題は、空き家問題ともつながります。再開発ではなく、空き家を解体撤去し、空地を増やして延焼を防ぐしかないと私は考えます。
人口減少が著しく、耐震化が進まない地域では、空き家問題を抱えています。
人の住まなくなった空き家で、耐震性能が著しく低い、旧耐震の建物を解体するように推進しなければなりません。
空き家が放置され地震で倒壊してしまうと、道路を塞いでしまう恐れがあります。過去の地震では建物の倒壊によって緊急車両が入れず、救助が遅れ、多くの命が失われています。
防災の観点から、空き家で残されるより、空地の方が地域の住人のためになります。
空き家問題の対応も町の防災のためには必要です。

耐震性能に注意をはらう

古い建物が作り出す、昭和以前のなつかしい風景、景観は観光資源となる場合があります。そのため、手を加えることをためらいがちです。
しかし、風景、景観の維持より、そこで暮らす人々の命の方が大事です。建物の耐震化をさらに進めていく必要があります。
私たちは、住む家、働く建物、暮らしのなかでよく行く場所、すべての耐震性能に注意をはらうべきです。
お金はたくさんかかりますが、命を守るためです。耐震化を迷うことなく進めていかなくてはなりません。

私は、今後も、家を建てる人、中古住宅を購入する人、不動産投資をする人に、地震をはじめ災害に強い建物を取得してもらうように、判断材料とアドバイスを提供していきます。

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